旬の野菜と夏の養生

2023.8.7

厳しい暑さが続いておりますが、二十四節気では「立秋」の頃、暦の上ではもう秋なのです。
立秋は秋の兆しが見え始める頃、
雨あがりの風の中に、虫たちの鳴き声に、秋の兆しを感じられるようになってくる頃です。
しかし、近年では地球温暖化の影響から日本の夏は亜熱帯の気候のようになり、連日35度越えの熱帯夜が続き、
局地的に線状降水帯が発生し豪雨をもたらしたり、台風も威力が増して深刻な気象になってきています。


東洋哲学での「天人合一」という思想では
天(自然界・大宇宙)と人(人体・小宇宙)はひとつである、密接な関係がある考えられています。
自然界に起こることは人体に大きく影響を及ぼしているとされています。
農業が生活の中心で天候や四季の変化が大きく生命に影響を及ぼしていた時代に生まれた思想ですが、
異常気象が続く今の時代、自然界で起きていることが人体にも影響を及ぼしていることを改めて考えたいですね。

人間は自然の一部であり、自然界にその育みをいただいて生かされています。
自然界に敬意を払いその変化を受け入れ生きることが養生につながり、
その季節の旬の食材を大切にいただくことが健康につながるのです。

「夏の養生」
夏は大地にエネルギーが満ちて植物も大きく育つ季節です。
人間も同様に新陳代謝が活発になり、活動的になります。
夏は適度な汗をかいて、体に溜まった余分な水分を排出しすると
冬の冷え性の改善に役立つと考えられていますが、
「汗は心の液」とも言われ大量の発汗は動悸や不眠などの症状や熱中症の原因にもなります。
冷房の効いた室内と外の気温差が激しすぎて体の体温調節がうまくいかなくなったり、
自律神経のバランスが乱れ不調をきたすこともあります。
旬の新鮮な夏野菜を摂ることで夏の体の不調を改善し、
「冬病夏治」と言って冬の不調、冷え性・関節痛・ぜんそくなどを夏の養生で防ぐ効果もあるのです。

体に溜まった熱を冷まし暑さから体を守る効果があるもの
ゴーヤ・ピーマン・みょうがなど苦味のあるもの。

水分の代謝をあげむくみをとり解毒効果のあるもの
トマト・なす・きゅうり・冬瓜・スイカ・小豆など

疲れた胃腸の働きを整えてくれるもの
かぼちゃ・じゃがいも・枝豆・オクラ・そら豆など

乾きを癒し失われたミネラルを補給してくれるもの
梅干し・レモン・梨・ズッキーニ・いちじくなど

冷房や冷たいものの取りすぎで冷えて疲れた胃腸を温め整える効果のあるもの
生姜・ニンニク・かぼちゃ・にんじんなど

暑い日は台所に立ちたくない時もあります。
時間と余裕のあるある時に常備菜を作っておくと重宝します。
旬のなすを使った常備菜、味付けに前回のコラムでご紹介した麹の調味料を使っています。
WELLERの店舗でも旬の食材を使った新作メニューがたくさん並んでいます。

「夏野菜のラタトゥイユ」
夏野菜をバランスよくたっぷりと摂れます。
冷やしても美味しいので常備菜にぴったりです。

・玉ねぎ・茄子・ズッキーニ・ピーマン・パプリカ・にんじん・トマトを大きめの角切り
・オリーブオイルでニンニクを炒め、トマト以外の野菜を入れて炒める。
・トマトとローズマリー・タイム・オレガノを入れて煮込む。
・トマト麹と胡椒で味を整える。
・耐熱皿に盛り付け、写真のように上にトマト・茄子・ズッキーニの薄切りを並べてオーブンで焼く。

「なす味噌炒め」
定番のお惣菜です。味付けに生姜麹を使っています。

・なすとピーマンを食べやすい大きさに切る。
・フライパンにゴマ油(米油)を熱して鷹の爪となすを炒める。
・油が回ったらピーマンをいれる。
・味噌と生姜麹を適量日本酒で溶いたものをいれ軽く炒めて出来上がり。

「イマーム・バユルドゥ」
トルコ料理。「坊さんが気絶するほど美味しい」という意味だそうです。
ハーブとスパイスが効いているので食欲増進効果もあります。

・なすは縦半分に切る。玉ねぎはスライス、トマトは角切り、にんじんとにんにくはみじん切り。
・フライパンにオリーブオイルを入れなすが柔らかくなるまで焼く。
・なすを取り出し、にんにく・鷹の爪・クミンシードを焦げないように炒める。
・玉ねぎとにんじんを加え柔らかくなってきたらトマト・トマト麹・生のタイムとミントの葉とレモン果汁を加え煮る。
・塩コショウで味を整えたらなすにたっぷり詰め込むようにのせてオーブンで焼きよく冷やしていただく。

「二十四節気と七十二候」

二十四節気は太陽の動きをもとに一年を春夏秋冬の4つの季節に分け、
さらに一つの季節を6つに分けて24等分してたもので立春から始まり大寒で終わります。
新しい季節の始まり、立春・立夏・立秋・立冬を四立と言い、
夏至(昼が一番長い)冬至(昼が一番短い)を二至、
春分・秋分(昼夜長さが同じ)を二分、この4つを二至二分と言います。
二至二分と四立をあわせて八節と言います。
天候や生き物の様子を表す名前が付けられ、農業の目安としてとても重宝されていました。
二十四節気をさらに約5日おきに分けて、動植物の様子や気候の変化を詳しく表したものを七十二候と言います。
立秋の七十二候
・涼風至(すずかぜいたる)涼しい風が時折感じられる
・寒蝉鳴(ひぐらしなく)カナカナとひぐらしが鳴き始める頃
・蒙霧升降(ふかききりまとう)深い霧が立ちこめるようになる頃
このように自然界で起こる出来事を繊細に表現されているのです。

元々中国で生まれた二十四節気なので日本の気象とはズレや違和感が生じます。
より正確に季節を掴むために考えだされたのが日本独自の雑節です。
節分・彼岸・社日・八十八夜・入梅・半夏生・夏土用・二百十日・二百二十日など、
生活や農作業に照らし合わせてつくられていて年中行事となっているものも多くなじみ深いものです。

二十四節気も雑節も自然界と共に生きるために生まれた美しい暦なのです。
地球温暖化の影響から、この暦が気候に合わないものになっていくことはとても悲しいことです。
食生活という身近なところから自然環境を考えていくことがこれからの時代とても大切なのだと思います。