麹の力
2023.7.18
今年は梅雨明け前から猛暑日が続き、
夏土用を前にもう夏バテ気味の方も多いのではないでしょうか。
土用というのは「土旺用事」の略で土が旺んに働く時期という意味があり、
立春、立夏、立秋、立冬の前の18日間を表すもので、次の季節に移り変わる前の準備期間でもあります。
陰陽五行説では自然界は木・火・土・金・水の五つの要素から成り立つと考えられ、
季節にも、春(木)・夏(火)・秋(金)・冬(水)と、季節の変わり目の土用(土)と五つの要素を当てはめたのです。
土用の丑の日というのはその期間に訪れる丑の日のことを表します。
夏土用には「う」のつくものを食べると病気にならないという言い伝えから
土用の丑の日にうなぎを食べるということが広まりました。
これは江戸時代の平賀源内の広告によるものです。
「本日丑の日。土用の丑の日にうなぎを食すれば夏負けすることなし」
これは日本初のコピーライティングとも言われています。
また夏土用の風習として、布団や衣類を湿気や害虫から守るために干す「土用干し」や
梅干しの土用干し、
柿の葉やよもぎの葉を入れた薬湯に浸かることなどが行われてきました。
土用は土を司る神様が支配する期間ということで土いじりを禁じていたり、
新しいことを始めることも避けた方が良いとされています。
季節の変わり目で体調を崩しやすく、精神的にも不安定になりがちな時期ですので、
昔からの智恵からこうした風習が生まれたのですね。
近年の夏土用の頃は非常に暑かったり、局地的に豪雨に襲われたりで体が対応できなくなってきています。
昔ながらの風習を見直して、体を労ってあげることも大切ですね。
さて、今回のお話は日本人の健康に欠かせない発酵食品「麹」です。
麹は蒸した穀物に麹菌を繁殖させたもので
醤油、味噌、味醂、酢、酒など和食に使われる発酵調味料はすべて麹菌によって作られています。
「麹」と「糀」
麹を表す漢字には「麹」「糀」の2種類があります。
「麹」は中国から伝わった漢字で、中国では麦を用いて作ることからばくにょうの漢字が使われ、
「糀」は明治時代に日本で生まれた国字で、蒸した米に白い菌糸が生えている様子が米に花が咲いたように見えることから生まれた漢字だと言われています。
中国の麹菌は「クモノスカビ」日本の麹菌は「ニホンコウジカビ」といい、作り方も異なります。
どちらの漢字を使うことも間違いではありませんが、「糀」は米麹を表すようです。
日本の麹菌「ニホンコウジカビ」は学名をアスペルギルス・オリゼーといい、地球上で日本にしか存在しない「国菌」なのです。
古くは古事記にもヤマタノオロチを倒したというアルコール度数の高い八塩折之酒が登場します。
「代表的な麹菌」
・黄麹菌 アスペルギルス・オリゼー
日本の代表的な麹菌です。
醤油、味噌、日本酒、甘酒、など多くのものに使われている麹菌です。
・黒麹菌 アスペルギルス・アワモリ
胞子が黒くクエン酸を多く分泌します。
温暖な気候でも雑菌が生えにくいことから、泡盛や焼酎に使われます。
・白麹菌 アスペルギルス・カワチ
黒麹菌の突然変異から誕生した麹菌です。
白麹菌もクエン酸を作りますが黒麹のようにクセの強さがありません。主に焼酎に使われますが日本酒に用いることもあります。
他にも豆腐ようや老酒を作る「紅麹菌」
鰹節を作る「カツオブシ菌」があります。
「麹の効能効果」
・消化を助け栄養素を分解する効果
麹菌には多くの酵素が含まれています。
プロテアーゼはタンパク質をアミノ酸に、アミラーゼはでんぷんを糖に、リパーゼは脂質を分解する効果があり消化吸収を助けるのです。
・代謝を促進
消化酵素が胃腸の働きを助け、血行を促進し代謝を高めます。
・免疫力アップ
酵素の働きによって腸内の善玉菌が増え、腸内の環境が整い、皮膚や粘膜を強く整えて疫力が上がります。
・美肌効果
麹菌にはビタミンB1、B2、B6、ナイアシン、イノシトールなど多くのビタミン類を生成し、美肌効果があります。
・食品を美味しくする
タンパク質を分解し、でんぷんを糖にする性質から、食品の旨みや風味が増し、肉などを柔らかくする効果があります。
最近は麹ブームで塩麹をお料理に使ったり、自家製甘酒や自家製味噌を作る方も増えていますね。
「手作り味噌」
乾燥大豆1kg、米麹2kg、天然塩400g、大豆の煮汁300ccぐらい
・水に浸して倍ぐらいに膨らんだ大豆を指で潰せるくらいまで煮込む
・麹をほぐし塩を混ぜて大豆を潰しながら混ぜて、味噌玉を作る
・容器に味噌玉を空気が入らないように入れ中央を高くし、表面に塩を振りかける。
・1kgほどの重石を乗せて涼しい場所で半年間保管する。
塩麹の他、玉ねぎ麹、トマト麹、醤油麹、生姜麹、ナンプラー麹なども常備しておくとお料理の幅も広がります。
「玉ねぎ麹レシピ」
玉ねぎ300g、米麹(生)100g、天然塩30〜35g
・玉ねぎをすりおろす、または細かいみじん切りにする。
・米麹と塩を混ぜ、玉ねぎを入れてかき混ぜる。
・清潔な容器で5〜7日間常温保存し毎日かき混ぜる。
・ピンク色や茶色っぽくなってきたら冷蔵庫で保管する。
「トマト麹レシピ」
玉ねぎ麹の玉ねぎをトマトに置き換えるだけです。
「醤油麹、ナンプラー麹のレシピ」
米麹100g、醤油orナンプラー200cc
・米麹をほぐし、醤油(ナンプラー)を入れてよく混ぜる。
・常温で1〜2週間毎日かき混ぜて、とろみが出たら冷蔵庫で保管する。
鰹節や昆布を入れると美味しくなります。
「麹を使った料理」
いつもの和朝食もほとんど麹が使われています。
・豆腐とわかめの味噌汁
・納豆の醤油麹和え
・きゅうりの塩麹漬け
・冷奴のトマト麹添え
玉ねぎ麹と蒸したきのこ類を和えておくとパスタや炊き込みご飯などにも活用できて便利です。
・玉ねぎきのこ麹のパスタ
茹でたパスタにきのこの玉ねぎ麹和えとバターを適量混ぜ、大葉の千切りと叩いた梅干しをトッピングする。
麹を使った自家製調味料は和食だけでなく色々なお料理に活用でき、
麹菌の酵素やビタミンの力が体を元気にしてくれるのです。
土用の丑の日に、価格が高騰している鰻を食べなくても、
こんな麹・発酵食品三昧の食事を摂ることで、
年々暑く厳しくなっていく夏を乗り切っていけますね。