発酵食品とは

2023.7.1

蒸し暑い梅雨の季節も終盤、
夏至から数えて11日目、今の季節を「半夏生」と呼びます。
二十四節気「夏至」を三つに分けた七十二候の中の一つであり、
日本の生活文化から生まれた日本独自の「雑節」の一つでもあります。
雑節は農作業を行う上での目安となっており、
半夏生は田植えを終える目安の日とされてきました。

「天から毒が降るので井戸の蓋を閉める」
「ハンゲという妖怪が徘徊するので外に出ない」
「竹の花を見ると寿命が縮まるので竹林には入らない」
など地方でいろんな言い伝えがあるそうですが、
半夏生の5日間は働くことをやめて、
田植えで疲れた体を休めるという昔の人の知恵だったのでしょう。
半夏生に食べると良いとされているものとして、
タコ、うどんなどの麦を使ったもの、鯖など地方によって色々ありますが、
一年の半分が過ぎ、本格的な夏の暑さを前に、
体が喜び、体の調子を整えてくれる食事を心がけたいですね。

日本人の健康を支えてくれている、
日本食になくてはならないものとして、
発酵食品があります。
和食に使われる調味料、
味噌、味醂、醤油、酢、酒は全て発酵食品ですし、
出汁を取るのに欠かせない鰹節も世界一固い発酵食品と言われています。
納豆や漬物、そして梅干しも発酵食品です。

「発酵とは」
自然界の菌や微生物、酵母などが持つ酵素の力でタンパク質などを分解し、
人間に有益な物質を作り出すことが発酵
人間に有害な物質を作り出すことが腐敗
なのです。
例えば牛乳をただ放置して雑菌などの腐敗菌が入ってしまうと腐った牛乳になり、
それを飲むことでお腹を壊し、食中毒になる可能性もあります。
しかし、乳酸菌という有益な菌によりヨーグルトやチーズに変化していくのです。

「発酵食品を作る代表的な微生物」
細菌
様々な種類がありそれぞれ作用が異なります。代表的なものが以下のものです。
・乳酸菌
ヨーグルト、チーズ、漬物、味噌、ザワークラフト、キムチなどを作ります。
整腸作用があり、ビフィズス菌、ヤクルト菌など100種以上あります。
・納豆菌
大豆タンパクを分解し納豆を作ります。
・酢酸菌
アルコールを酢酸に変えて酢を作ります。
米酢、りんご酢、ワインビネガーなどの他、
ナタデココはココナッツ水に酢酸菌の一つナタ菌を加えたものです。

酵母
ブドウ糖をアルコールと炭酸に分解する微生物です。
ビール酵母、パン酵母、清酒酵母などがあります。

カビ
デンプンを糖に、タンパク質をアミノ酸に、脂肪を脂肪酸に変え
分解後は、アミラーゼやリパーゼといった分解酵素が生成されます。
麹菌、紅麹菌など味噌や醤油、味醂、米酢など和食に欠かせないもののほか
鰹節を作るカツオブシ菌やブルーチーズに使われる青かびなどがあります。

「発酵食品の効果効能」
発酵により栄養素が増し、吸収力も上がるため様々な効果があります。
・腸内環境を整える
・免疫力の向上
・脂肪の分解を促す
・生活習慣病の予防
・肌の調子を整える
・ストレス緩和
など体を整える作用のほか、
うまみ成分が増して美味しく食べられるという効果もあるのです。

「発酵か腐敗なのかを分けるのは科学ではなく、文化である」
発酵学者、小泉武夫氏の言葉です。
体に有益かどうかを見分けるのも難しいですし、
食文化によって様々な価値観の違いがあるのです。
日本人が好む塩辛など魚介類を発酵させたものや、納豆などは、
食べる習慣がない人たちにすれば、腐った魚、腐った豆、としか思えないでしょう。
海外の発酵食品、例えば強烈な匂いの臭豆腐はなかなか食べる勇気が出ないものです。

また、発酵食品は発酵しているので腐らない、というのも間違いで、
適切な作り方や適切な管理下でないと、雑菌が侵入して腐ってしまうのです。

発酵が終わった後、寝かせておくことによって風味や品質が良くなることを「熟成」と言います。
味噌は熟成期間によって風味、色合い、香りなどが変化していきます。
チーズも熟成の違いによっていろんな種類のものが生まれます。

夏バテ防止にも発酵食品を日常的に摂り健康を保っていきましょう。
次回は日本の発酵食品に欠かせない「麹」について書かせていただきます。