柚子仕事

2023.11.29

気候変動の影響か、季節の二極化が進んでいるように感じます。
つい最近まで25度以上の夏日があったかと思ったら、
冬将軍の早めの到来で強い寒気が降りてきて、真冬の寒さに。
体が対応しきれませんね。
しかし、季節を感じさせてくれるものはまだまだたくさんあります。
黄金に輝く銀杏並木、燃えるように赤く染まる紅葉、
たわわに実る艶やかな柿と軒下に吊るした干し柿。
そして深緑の実が鮮やかな黄色に移り変わっていく柚子。

今回のテーマは柚子仕事です。

我が家の庭にある柚子の木はかなり年季が入っていて、植えてから30年以上は経つでしょうか。
10年ほど前から、毎年とてもたくさんの実をつけてくれます。

「桃栗三年柿八年」ということわざがありますが、これには
「物事は一朝一夕に成し遂げられるものではない、長い年月が必要である」
という意味が込められています。
桃も栗も植えてからすぐに実はならず、3年ほど経たないと実を結ばない。柿に至っては8年もの歳月が必要、ということで、
簡単には一人前になれない、立派に成長するにはそれなりの年月が必要、という意味合いで使われるようになりました。
実際に桃も栗も柿も、すぐには実らず、木が成長し熟す歳月が必要です。
そしてこのことわざには地域によっていろいろな形の続きがあるのです。

「桃栗三年柿八年 柚子の馬鹿目は十八年」
「桃栗三年柿八年 梨の大馬鹿十八年」
「桃栗三年柿八年 梅は酸い酸い十三年 梨はゆるゆる十五年 柚子の大馬鹿十八年 みかんのマヌケは二十年」

他にも
「桃栗三年柿八年 梅は酸いとて十三年 柚子は九年花盛り 枇杷は九年でなりかねる」
こんなものもあります。

いずれも植えてから収穫まで時間がかかるということを伝えています。

実際に我が家の柚子も植えた当初は全く実がならず、植えてから20年ほど過ぎてからこのようにたわわに実るようになりました。
自然の力の雄大さと生命の粘り強い力を感じますね。

柚子仕事

毎年、香り豊かな庭の柚子を余すことなく使わせていただいています。

黄色になる前の青柚子は最近大人気の「柚子胡椒」に。

ちょうど同じ時期に青唐辛子も出回るのです。
余った青唐辛子を刻んで、麹と醤油と和えて漬け込めば
「三升漬け」
というご飯のお供になります。

黄色くなった香り豊かな柚子は
「柚子ジャム」

果汁は同量の醤油と昆布など出汁になるものも入れて
「柚子ポン酢」

柚子の皮は細い千切りにして冷凍しておけば料理のアクセントに使えます。

種子も捨てずに
「化粧水」に。
種子のぬめりはペクチンで保湿性が高く、コラーゲンを生成するので肌のキメを整えて潤いと弾力を与えてくれます。

種子だけを醤油漬けにしてもとろみのある香り豊かな調味料になります。

その他にも
「柚子酒」
「柚子茶」
「柚子の皮のピール」
「柚子塩」

など、捨てるところがなくいろいろな使い方があるのです。

料理に使って余った柚子をお風呂に浮かべて浸かれば、ひびやあかぎれを保護し風邪の予防にもなるのです。
ことわざでも「冬至に柚子湯に入ると風邪を引かぬ」と言われています。

これから先、気候の変動がどのような形で四季折々の植物に影響していくかわかりませんが、
与えられた自然の恵みを大切に受けとり、余すことなく丁寧に使わせていただきたいですね。
それがフードロス削減にもつながり、気候変動も食い止めていくことに少しでもつながっていけばと思います。
生かしてもらっている地球への感謝と恩返しの気持ちを、私たちは忘れてはいけないのです。

春よりこちらでコラムを書かせていただいておりましたが、
今回が最終回となります。
WELLERのお店のコンセプトに沿っていろいろなテーマを掘り下げていくことで、私自身もとても勉強になり、気付かされることがとても多かったです。
便利な生活が生まれていくことは人類の進化ではありますが、古くから伝わる風習や自然界と共存する術など、大切に守っていかなくてはいけないことがたくさんあるのです。
次世代に美しく豊かな地球を託していくために、考え直さなくてはいけないこと、努力しなくてはいけないことがあるということを改めて深く感じました。
地球の悲鳴を聞き逃してはいけないのです。

今まで読んでいただきありがとうございました。

堤 晶子